なぜルートナビゲーションのラベルは名詞が良いのか

名詞の場合

(検索など多少の例外はあるものの)基本的にアプリケーションの最上位のナビゲーションであるルートナビゲーションにはオブジェクトを並べます。その理由はシンプルです。こうすることでユーザーが名詞→動詞の順で操作できる構造になるからです。

この部分をもう少し詳しく考えてみましょう。

ルートナビゲーションで普通名詞を選択、コレクションから固有名詞を選択、その詳細を確認して必要に応じて動詞を選択する

ルートナビゲーションに並んでいるのは、オブジェクト名です。英語だとこの部分は複数形になることが多い箇所かもしれません。

名詞といってもいわゆる普通名詞です。クラスとそのインスタンスという表現をするならばクラスになるでしょう。

表示されているコレクションに並んでいるものは固有名詞です。こちらはクラスのインスタンスの方です。

つまりユーザーは普通名詞を選択して、その後固有名詞を選択して、必要に応じて動詞を選択することができます。

動詞の場合

タスク指向のUIではルートナビゲーションに動詞が並びます。(厳密には日本語の場合、「名詞+する」で動詞になり、それをUIのデザインでは慣習的に「する」を省略して体言止めにするので、動作を名詞化したものとの区別がつきにくいところもあります。例:履歴などにあらわれる削除したこととしての「削除」オブジェクトと「削除(する)」アクション)

ユーザーは対象を特定する以前に自らのアクションを選択する必要があります。ルートナビゲーションに動詞を配置することがなぜ問題なのかはシンプルです。

対象を指定していない段階で動詞を決定することが難しいからです。

動詞をもう少し考えてみましょう。

[削除]というラベルのボタンは動詞を選択する

動詞には自動詞と他動詞があります。

このうち少なくとも他動詞というのは他に作用するような動詞で「を〇〇する」のように使われます。「を」の前に来るのが言ってみればオブジェクトでしょう。

品詞の詳細な定義に踏み込むことが本題ではないのですが、そもそも動詞はオブジェクトを伴うものがあるということがわかります。(他動詞は目的語を伴う動詞とも言われるのでそのままです。)

例を挙げると「投げる」という言葉を聞いたときに脳内で作られるイメージには何か対象があるはずです。もちろん純粋に投げることだけをイメージすることもできなくはないですが、それは曖昧なイメージになるでしょう。大抵はぼんやりとした投げられるものを前提に「投げる」が想起されているのではないでしょうか。

当然この投げるもの、つまりオブジェクトがはっきりしている方がイメージがしやすいはずです。

自動詞は自身に作用する動詞です。本来は自身といっても主体となるのは木や花や草もあり得ますが、タスク指向のUIが前提とするタスクはユーザーのタスクです。つまり省略されることはあるにせよ、タスクを言語化するときの文章構造は「ユーザーは〇〇する」という形になり主体はユーザーになります。

このため「ユーザーが転ぶ」などの文章を作ることはできてもタスクの定義に登場することはあまりないでしょう。

ユーザー自身に作用する、つまり自分というものもオブジェクトとして扱うならば「ユーザーは自分を転ばせる」になるかもしれません。

「移る」のような動詞の場合はどうでしょうか?こちらも自身に作用することを前提にすれば「ユーザーが自分を移す」と捉えることもできます。

いずれにしてもタスクを表現する際に使われる動詞は実はオブジェクトと関連していることが見えてきます。そしてその動詞に関連するオブジェクトがあるならば、そのオブジェクトを表現した方がわかりやすくなるというわけです。

名詞+動詞の場合

では名詞と動詞を組み合わせるのはどうか?という発想もできなくはないでしょう。具体的には名詞と動詞を組み合わせたラベルをルートナビゲーションの項目名に用いる場合です。

この場合、名詞は指定された前提で動詞を選択するので問題がないようにも思います。ただUIのナビゲーションを前提にするならば、名詞といっても2種類あります。

それは普通名詞と固有名詞です。この違いから考えてみましょう。

スタッフ削除というボタンのスタッフは普通名詞、削除が動詞

ボタンのラベルにある名詞は普通名詞にあたります。つまりユーザーは固有名詞を指定していない状態で動詞を決定する必要があります。普通名詞を特定したとしても、固有名詞を特定しない状態で動詞を組み合わせるのはやはり難しいでしょう。

実生活でも漠然と「食べ物を食べたい」と思うこともありますが、実際にある食べ物を手に取った時、その食べ物が腐ってたら食べないはずです。

漫画:健太「あ!りんごを買ってあったんだ!あれ食べよっと」「うわ!なんか腐ってる!」「これとこれとこれなら食べれる!」

The Art of User-Interface Design