まんが 「Ladders」

ある日届いた不思議な招待状。導かれた先には奇妙な館。梯子の問いに迷い込んだ者の行く先はいかに。

表紙
『Ladders』
梯子を登るぺの後ろ姿
ぺ「デザインはアートじゃない!」
突然ぺが机を叩きながら叫んだ。
友人 「どーしたの?」
ぺ 「デザインは」
ぺは机の端に手を掛け、
「理由があるんだあ!」と言いながら力一杯ひっくり返す。
(回想シーン)
数日前
まだ眠そうに鼻ちょうちんをつけたペが自宅のポストを開けると赤い手紙が届いていた。
ぺ 「ん?」
ぺがその赤い手紙を手にとり、読んでみると中央に金色の字でこう書いてあった。
「デザインはアートではない」
紙の下には「WHY BOOKS」と小さく書かれ、三つほど本の表紙が紹介されていた。
「NEW」という文字で新刊が、「DESIGN …」というタイトルのようだ。そのほかにも「WHY」や「世界を変えるWHY」という本も出しているらしいことが伝わってくる。
友人「落ち着いて」
友人はぺをなだめる。
ぺ 「はあ、はあ」
肩で大きく息をするぺ。
ぺ「止めないでくれ」
友人 「ん?」
ぺ 「行ってくる」
キリッと振り返ってぺは顔を近づけてこう言った。
ぺ「ホワイの館へ」
友人 「あ・・・」
戸惑う友人がかける言葉を選ぶうちにぺはどこかへ向かっていった。
ヒュウウウウウ
風が吹き木が揺れる草原
ぺが歩く小道の先には一軒の赤い屋根の家があった。
その赤い屋根の家、なんとほとんど地面に埋まっていた。
地面の上に出ているのは赤い屋根、その屋根に指で方向を示す看板が立てかけられ、その先には梯子があった。梯子が向かう先は屋根の最上部、小さな小部屋だった。
ぺ 「ここか」
小部屋の前に立ったぺはそう言いながら、ドアとも言えぬ、どちらかというと窓のような入り口に恐る恐る近づいた。 窓の上にはピンクのネオン管でWHYと書かれている。窓の周りにも「ALL YOU NEED IS Ladder」「UP & Destroy」と書かれた看板があった。
ぺ「ごくり」
扉を開ける。
ぺ 「ごめんください」
男「ホワーイ?!」
ぺ「うわあっ!」
突然の声にぺは大声をあげた。
部屋の中にいた男は淡々と続ける。
男「ようこそホワイの館へ。私はこの館の主だ。とあるものを研究しておる」
黒いシルクハットを被り、黄色の蝶ネクタイ白いシャツに黒いズボンを履いた長い白髪と髭をたくわえたその男はそう言った。
ぺ 「ほえ?」
ぺは男の後をつい家を降りていく。
「実は」とぺが言う声にかぶせるように「わかっておる」と男が言った。
金色の縁の赤い絨毯の上にきて男はステッキのようなもの絨毯に刺繍された金色の文字を指し示した。ぺが下を見て驚いた。
そこにはこう書いてあった。
「DESIGN IS NOT ART」
男は ぺがきた理由がわかっていたのだ。
ぺ「デザインには理由がある。感覚で判断するものではない」
ぺ「って誰かが言ってた」
部屋の中にはぺを導いた赤いチラシに載っていた書籍が整然と積まれていた。
男 「ふふふ『理由』に飢えておるのう」
男は不敵な笑いを浮かべながら当然のようにそう言った。
男「お主となら解明できるかも知れん」
そう言うと男は黄色の大きなはしごを手にして続けた。
男 「この不思議なはしごを」
見れば部屋の天井からたくさんの梯子が吊るされている。
ぺ「は、はしご?」
ぺがたずねると男は続けた。
男 「数十年前、たくさんのはしごが見つかった。ただのはしごではない。組み合わせると強い力を発するようなのだ。危険なほど大きい力になることもあるが協力してほしいのだ」
(回想シーンでは屋根裏部屋の階段を引き出そうとして大量の梯子が落ちてきて驚いている若き日の男の様子。)
男はペに詰め寄った。
ぺ「きけん・・・?」
ぺがたじろぐと男は振り返り呟いた。
男「解明すれば世界初となるだろう。ムリにとはいわんが」
ぺ 「世界初・・・」その響きがぺを刺激した。
ぺ「やりましょう。世界のために」
男「おぬしの最初のホワイはこれだな」
男は持っていた棒を支えにはしごの一番したの段を塞いでいる板にこう書いた。
『感覚で判断しないのがいいデザイン』
男 「理由を聞かせてくれるかね」
男はたずねた。
「ユーザーにとって良いから」とぺが答えると「オ〜ウケ〜イ」と男はぺを見ずに言った。
男「ラダ〜ア〜ップ」
男は最初のはしごの上に登り手を伸ばし、次のはしごを掴んで引き寄せた。
男「さあ、はしごの上へ」
男 「このようにホワイとビコーズを組み合わせのぼってくれればよい」
二つ目のはしごが最初のはしごの上にガチャっと音を立ててくっついた。
すると最初のはしごの一番下の方から伸びていたケーブルがビリビリと揺れた。ケーブルの先についていた細長い棒の先の丸い測定器の針も揺れた。
不思議なはしごは他に支えがなくてもはしごの上にはしごがくっついていた。
ぺは2つ目のはしごの先まで登った。
そして「なぜユーザーにとって良いのか」と自問し、「目的を決めてユーザーが使う様子を観察したから」と自答した。
男「ふふふ、いいぞいいぞ」
測定器のメモリが動くのをみて男は言った。
男「では少し強めのはしごを追加するぞ」
男はどこからか垂れ下がったロープをぐいと引っ張った。
するとぺの目の前に新たなはしごが二つ降りてきた。
はしごの一番下の段を埋めるように板が貼り付けられ、なんとそこには顔があった。
ぺ 「ん?顔・・・?」
ぺが戸惑っていると顔の質問がはじまった。
梯子1「なぜそのタスクなのか?」
梯子2 「なぜユーザーなのか?」
梯子3「なぜその方法を選んだのか?」
矢継ぎ早に質問を浴びせてくるはしご達。
その数はどんどん増えていった。
ぺの立っているはしごにガツガツと音をたててぶつかってくる。
「ユーザーの状況が、エライ人がこの方法を、ビジネスが、成長が、指標が」とぺは必死で答える。
それをみていた男は「いいぞ!」と興奮気味にそう言った。
しかし、はしごは次々とあらわれ質問は止まらない。
「なぜそのビジネスなのか?」「なぜその成長なのか?」「なぜそのエライ人なのか?」「なぜその指標なのか?」「なぜそのバランスなのか?」「なぜその意思決定なのか?」「なぜその解釈なのか?」
そして最後に出てきたはしごがこう言った。
「なぜのホワイのはしごをのぼるのか?」
「え?」とぺは絶句した。
そして苦し紛れにこう大きな声で叫んだ。
ぺ 「いいものはいいんだ!そう感じたの!」
そう言い放ったぺは不思議と解放感を得ていた。
ぺ「あースッキリした」
そのとき、ゴゴゴと地鳴りとともに大きな揺れがはじまった。
ぺ 「な、なんだ?」
轟音と共に揺れはどんどん大きくなる。
男「かつてないエネルギー!」
針が振り切れた計測器を見ながら男は言った。
そして次の瞬間。
ドン
大きな音と共に衝撃が走りはしごはバラバラになりぺの身体は宙に浮かびあがった。
ぺ「わー!」
ぺが崩れたはしごから真っ逆さまに落ちていく。
重なり合ったはしごに跳ね返り、ぺのマントが一つのはしごに引っかかって宙吊りで止まった。
最悪の事態は免れたぺが下の床を見て何かに気づいた。
ぺ 「ん?」
床の絨毯の文字がはしごに隠れ『DESIGN IS ART』という文字が出現していた。
ぺの前にまたはしごが降りてきた。
ぺ 「は、はしご!ひー!」
ぺがおびえていると頭上から馴染みの声。
友人「おーい 大丈夫かー?」
みると壁の窓からはしごをロープで縛り助けようとしている友だった。
ぺ 「ん?」
外に出てきたぺは異変に気づき口をあんぐりあけた。
ぺ「ぎょえ〜!」
なんと屋根まで埋まっていた館が地面から飛び出していたのだ。
ぺは去り際に
「ここで一句、はしごから落ちて館は上のぼる」
とつぶやいた。
次の日。
「昨日はエライめにあったなあ」
ぺがそう言いながら家のポストを開けた。
ポストの中に一枚の紙が届いていた。
ぺ 「ん?」
ぺ「ひょえーっ!」
ぺはその紙を投げ捨てて走り去った。
なんと、その紙にはこう書いてあった。
『デザインはアートではないわけではない』

The Art of User-Interface Design